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東京都 LED電球交換事業について

先日の朝のNHKニュースから・・・

東京都 LED電球への無料交換 期間を延長へ | NHKニュース
東京都は、去年7月、家庭にある白熱電球2個以上を都内の電気店に持ち込むと、エネルギー効率のよいLED電球1個とで交換する取り組みを始めました。
この取り組みは今月9日でいったん終了しましたが、交換されたLED電球はおよそ28万個と、都が目標としていた100万個を大きく下回っています。
このため、都は事業の期間を延長し、来月15日から来年3月末まで再び行うことになりました。
さらに、白熱電球1個でも交換に応じるほか、使い終わった白熱電球も交換の対象に加えます

こんな事業が展開されていたとは露知らず、普通に電球を購入しておりました・・・?

どういう流れで展開していたのか?どうすれば実施を知ることができたのか?
ということで、勝手に考察してみます。

事業の経緯

まずはどの様に事業が進んでいったのか、東京都の報道発表を元に経緯を確認。

事業協力店舗の募集開始(2017/4/3)

確認できる最初のリリースは、事業開始の約3ヶ月前に発表された参加協力店舗の募集告知。

家庭LED省エネムーブメント促進事業 参加協力店募集|東京都(報道発表資料:2017年04月03日  環境局, 公益財団法人東京都環境公社)

参加条件は「店舗面積が500平方メートル以下」「都が指定する講習会を受講すること」など。

事業詳細の発表(2017/5/26)

事業開始の約2ヶ月半前に、告知宣材としてピコ太郎を起用したPR動画がリリース。(※動画はすでに閲覧不能)

7月10日よりLED電球交換開始|東京都(報道発表資料:2017年05月26日  環境局

私はこの動画は記憶にありませんが、当時話題のピコ太郎を起用したということで、ワイドショーでピックアップされていたかもしれません。また、これ以外になにか告知活動が行われていたかは不明。

事業開始(2017/6/26)

LED電球交換事業の詳細決定|東京都(報道発表資料:2017年06月26日  環境局)

資料には「交換開始直後は、混雑が予想されます。LED 電球は 100 万個ご用意していますので、余裕をもってお越しください。」と書かれており、かなりの利用を予想していることが伺えます。

評価指標として週あたりの交換を算出すると、「100万個 / 52週 = 約19,231個 / 週」。
これを元に、現場の想定対応数を計算してみると、「参加協力店(地域の家電店)=831店」で、店舗あたりの週平均交換数「23個/週・店舗」(日平均だと「3.3個/日・店舗」)と、それほど負担のない値になっています。

また、このタイミングでホームページもリリースされていたようです。(※当時のページ内容はアーカイブされていないため不明)

引き換え条件緩和の予告(2017/8/15)

開始から1ヶ月、代理受領が可能になるという予告と、経過実績がリリースされました。

LED電球の交換実績及び代理受領についての方針|東京都(報道発表資料:2017年08月15日  環境局)

「7月10日(月曜日)~8月13日(日曜日)までの35日間で65,953個」。
週あたりでは「約13,191個 / 週」。想定数「約19,231個 / 週」の約69%

初動1ヶ月で目標の7割ペース。
期間が短いのと、告知戦略次第といったところで、この時点では評価は難しいところ・・・ですかね。

引き換え条件緩和の開始(2017/9/5)

8月に予告した引き換え仕様変更が始まりましたよ!というリリース。
このリリースでは実績値の発表はありませんでした。

LED電球交換の代理受領を開始します|東京都(報道発表資料:2017年09月05日  環境局)

参加協力店の追加募集開始(2017/10/2)

開始から3ヶ月、参加協力店舗の追加募集のリリースです。
募集条件は変更なし。また、実績値の発表はありませんでした。

参加協力店の追加募集とLED電球の交換実績|東京都(報道発表資料:2017年10月02日  東京都環境局,公益財団法人東京都環境公社)

追加協力店舗(40店舗)発表(2017/11/14)

開始から約4ヶ月。
10月2日からの参加協力店追加募集結果(40店舗追加)と、これまでの実績を発表。

LED省エネムーブメント 協力店追加とLED電球交換実績|東京都(報道発表資料:2017年11月14日 環境局)

「7月10日(月曜日)~11月12日(日曜日)までの18週で146,022個」。
週あたりの交換数としては「約8,112個 / 週」。

9月に実施した「引き換え条件変更」の施策もあまり効果がなかったようで、初動含めた5ヶ月間で想定数「約19,231個 / 週」の約42%。8月の実績発表以降の差分をみると「8月14日(月曜日)~11月12日(日曜日)までの13週で80,069個」(週あたりの交換数は「約6159個 / 週(約32%)」)という状況。

これは結構まずい状態だろうと予想されますので、テコ入れとして、新たに協力店追加というアクションが計画+実施されたことが伺えます。

イベント参加告知+代理受領条件緩和(2018/3/19)

環境局関連イベントにおいてLED電球交換事業を実施|東京都(報道発表資料:2018年03月19日  環境局)

状況打破のためかは不明ですが、「食品ロスもったいないフェスタ」「アースアワー2018消灯セレモニー」という2つのイベントに出展。

代理受領についてかなりの緩和が行われ、「心身の障害、高齢、病気療養中などの理由」という要件が撤廃され、フリーな状態になりました。(これらの条件がイベント限定だったのかは不明)

イベント出展企画で「家庭で使用中の白熱電球2個以上持参」という条件は、かなり事前告知をしないとハードル高いように見受けられますが、告知・啓蒙活動と割り切った参加だったのかもしれません。

事業終了+延長予告(2018/6/22)

7月9日の終了の約2週間前に、8月15日から来年3月31日までの事業継続が発表されました。

LED省エネムーブメント促進事業 新な仕組みで事業開始|東京都(報道発表資料:2018年06月22日 環境局)

実績は「279,037個(平成30年6月17日現在)」で、用意していた100万個の約28%。
週あたりの交換数は「約5,694個 / 週(約30%)」。※49週換算

11月の実績発表以降の差分は「11月13日(月曜日)~6月17日(日)までの31週で133,015個」(週あたりの交換数は「約4,291個 / 週(約22%)」)。

11月、3月と実施されたテコ入れ施策での巻き返しはならず、着実に利用数は低下。用意したLED電球のうち72万個が残っている状況で、在庫処理のためにも継続せざるを得ない状態かと予想されます。このため、8月15日からの継続フェーズでは交換条件が緩和(ワット数条件なし。口金E17が対象に追加。1個で交換可能など)、同時に交換数制限もリセットされて、7月9日までに交換済みの人も8月15日以降に再度交換可能と、かなり大盤振る舞いな条件に変更されています。あわせて、協力店舗の追加募集も実施されています(条件は変わらず)。

LED省エネムーブメント促進事業 参加協力店を募集|東京都(報道発表資料:2018年06月22日  環境局, 公益財団法人東京都環境公社)

・・・と以上が、現在までの一連の経緯。

考察

一連の経緯を踏まえて、この事業が目標を達成できなかった原因と改善策を考察してみます。

告知

結果的にもそうですが、わたしも全然知らなかったということで、告知不足の感は否めないかと思います。メインターゲットをどこに据えていたかは不明ですが、ピコ太郎の動画による告知内容が適切だったのかは疑問です。しかし、そもそもこれだけ情報過多の時代に、漠然としたPull的な告知はかなりのコストを投下しないと効果は期待できないでしょう・・・。ニーズ発生タイミングとして「電球交換」は明らかではあるものの、そのタイミングを的確に捕捉するも難しそうです。(電球を検索している人にAD展開するとかあるかもしれませんが、東京限定などの条件もあり、と面倒な予感・・・)なので、告知は「一応やっておいた」ぐらいの位置づけで、それほど力を入れていないように見えますし、実際、Push的なアプローチで効果が期待できる施策もあまり無いかもしれません。

交換個数の増加に合わせてピコ太郎の何かが展開されていくようなキャンペーン企画があれば、継続的な露出もできたかもしれませんが、このへんはギャンブル性が高いところかなと思います。

動機とタイミング

「使用済みの電球を新品のLED電球に交換できる」という企画内容は、対象が生活必需品であること、LED電球価格などから、高い価値を持っていると考えられます。一方で、交換タイミングという面では、「寿命の切れた電球」を保存している人が基本的に少ないだろうという前提の元、「使用中の電球」でも交換可能となっているものの、現状稼働しているものを電気店に持参して交換するほどのメリットをLED電球1個の交換に見いだすのが難しいように感じます。

これは個人的には手間云々というよりも、家庭にある複数の電球のうち、ひとつだけをLED電球に変える気持ち悪さが関係していて、「変えるなら一式LEDに取り替えたい」と考えた結果、「残り3個は別途購入することになると、****円の出費が発生する」という、目先の利益獲得に付随するコストがメリットを殺している部分があるように感じています。これが複数個まとめて交換できたならば、メリットの強度が増して、違う結果になったように思います。(当然、上限の設定と、不正抑止の対応が必要になりますが・・・)

また、事後返金というアプローチも改善が期待できるように思われます。つまり、無料交換できることを知らずに電球を購入した人に対してチケットを発行し、後日、チケットと使用済み電球を持参すると現金を返金する。というフローで、ニーズの発生タイミングに対して確実にリアクトが可能になります。購入者が後日に再訪する手間はありますが、ユーザの行動に対して明示的に権利を与えるという意味でPull的な面があり、Push的な事前告知よりも誘導を促せるように思います。(「現金を返金する」という事務手続きが煩雑なのと、トラブルになりやすいリスクはありそうですが・・・)

交換場所

交換場所が電気屋だけであることは、かなりネックであるように思います。

個人的には電気製品はほぼオンライン購入で、街の電気屋さんを利用しないため、すぐに店舗を思い出せないですし、店舗数もかなり減っている気がします。一般的なECに対しての実店舗のデメリットになりますが、サラリーマンの帰宅時間まで営業してないため土日祝日に交換せざるを得ないが、土日祝日に休業している可能性が高く、念の為、営業日を確認しようにもWebサイトがない可能性がある云々・・・。LED電球一個の交換のためにこれらのデメリットをクリアするのは、なかなかの気合が必要そうです。それよりも日常的な実施ではなく、なにかのイベントに連動して副次的に実施するほうが、きちんと事前告知さえできれば、うまく稼働するかもしれません。

また、交換場所に「コンビニエンスストア」が含まれていれば、営業時間を気にせず、食購入のついでにブラっと交換なんて手軽な形での利用が増えたかもしれません。(当然、「コンビニエンスストア」の参加が、他の懸念から抑止されていた可能性はあります。参加条件の「講習受講」なども、そういう目的かもしれませんが、ここではあくまで「LED省エネムーブメント促進事業」の活用を目的に話を進めます)

対象者

対象者は「代理受領」が認められていますが、基本「都内に住民登録のある18歳以上」です。しかし、先に述べた条件を鑑みると18歳以上の交換メリットはあまり強くないと考えられます。事業開始時期が7月10日なのであれば、この年齢条件を解除して、休みを利用した学校を対象にした企画も考えられたのでは無いかと思います。

小学校で省エネをテーマとした夏休みの課題コンテストを実施。サブ企画として「家の電球をLEDに変えよう!」を実施し、夏休み中に子供達に使用済み電球を収集してもらう。休み明けに協力店舗に来校してもらって交換・・・なんてフローだと省エネ教育と電球交換コストの分散ができそうです。(協力店舗の来校メリットがあまりなさそうですが、補助金と、店舗宣伝あたりをセットで解決できるのではないかと・・・)

また、交換したLEDを用いて消費電力比較実験の授業を行い、LEDの効能を子どもたちに理解してもらった上で、持ち帰って貰うなんて対応ができれば、家庭における省エネ伝道師として子どもたちに活躍してもらうことも期待できそうです。(現実として、授業のコマ数はパツパツで特別授業の挟み込みは難しそうですが・・・)

まとめ

ということで、色々な制約、現場状況など無視して好き勝手に妄想を書いてみました。
まだまだ考えれば色々と出てきそうですが、一旦これでの体操は終了。

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